ミッシェル・ベロフ氏公開レッスン

ミッシェル・ベロフ氏の公開レッスンが国立音大で先週から行われています。
フランスの方なのにコーヒーはお飲みにならず、紅茶党。CDのジャケットなどを長年見てきた私にとっては「青年ベロフ」のイメージが強かったのですが、国立で毎年来日されているベロフ先生は、大柄な円熟した紳士です。
先週のベートーヴェンのレッスンでは、音や演奏に違和感を感じることも多かったのですが、さすがドビュッシーのレッスンでは、音楽のすみずみまで体に入っていらして、何度も暗唱している詩を扱うかのよう。そこに絵が浮かび上がるような演奏でした。
ベートーヴェンのときに感じた違和感は、おそらく流暢すぎるような流れと間のとらえ方が、どうもベートーヴェンの思いとはかけ離れているように感じたからであろうと思います。

譜読みミスを指摘する段階のレッスンになってしまうと、わざわざ日本に来て時間がもったいない、と聴く方も思い、苛立ちを覚えますが、レッスンというのは、その人の音楽感が如実に出るように思えます。
バルトーク、ラヴェル、ドビュッシー、プロコフィエフ、ベートーヴェン、と次々に学生が持ってくる曲すべてをそらんじている可能性はあまりなく、どの先生も得意、不得意があるのは当然のこと。
演奏家として演奏会に出すときは、レパートリーやプログラムを選んで納得のいく選曲で勝負していかれることでしょう。オールマイティーになんでも弾くというピアニストもいるかもしれませんが、音楽性に向き不向きがあるのは当然のこと。
しかし、招聘教授として教育者として登場するときは、そういうわけにもいきません。広い視野と演奏家としての魅力、その両方を合わせ持たなければならない、ある意味、演奏家以上のオールマイティーが要求される厳しい立場ともいえるかもしれません。

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