ミンヨン 倍音の法則

2015-03-03-10-09-31
先日、岩波ホールで公開中の佐々木昭一郎監督の「ミンヨン 倍音の法則」を鑑賞しました。
現役女子大生でもある韓国人ミンヨンが、演技指導を受けて「主人公・ミンヨン」に挑戦。映画全編にミンヨンが複数の役で登場しました。韓国語、日本語、英語を話し、爽やかな笑顔と綺麗な声を持つミンヨンが、「夢」と現実を行き来する形で物語は進行していきます。
「倍音とは円である」とモーツァルトが語った、、、という夢をミンヨンの妹ユンヨンが見るのですが、それがこの映画の主題でもあり、ミンヨンが、その円とハーモニー(調和)の中心。大学のキャンパス、悪夢の戦時下、満州に旅立つジャーナリストとその妻子、海辺、風鈴売りのおじさん、ソウルの上流家庭、、、様々な場面が重層的に登場し、次々に現れては消えていきます。その中に監督のご両親への想い、メッセージ性や個人的な思いが感じられました。
そしてモーツァルトの音楽が使われる映画は数多けれど、この映画ほど(アマデウスのような音楽映画を除いて・・・)、長い時間モーツァルトが使われた映画は珍しいでしょう。モーツァルトの持つファンタジックな世界と主人公ミンヨンの「夢」が重なり、悲しみのない世界への憧れと希求がモーツァルトや韓国民謡などとともに描かれます。
ただ、正直なところ、今回の映画では、何度も腕時計を見てしまいました。ほとんどガラガラの会場も「長い」と感じてしまったのが、わたし一人ではないことの現れかもしれません。
青空の美しさ、セピア色の夢の中の風景、緑の中を歌いながら駆けるミンヨンの伸びやかさなど印象に残るシーンは多いのですが、そのつながり方が「?」となる瞬間が多く、その流れに身を任せることができなかったのです。
歌うシーンが延々と続くのですが、そこでは、もともと上手な歌を求められてはいなかったのかもしれませんが、鼻歌のように気楽に、地声を張り上げながら歌われ続けます。
モーツァルトを歌うということは、発声の訓練を重ね、声楽を極めたプロであってもすべてが晒される行為です。映画の制作期間だけで、人を感動させるだけの歌唱にもっていくのには、無理があったように感じました。
演技、歌唱で人の心を動かすには、たとえ素質があったとしても多くの時間が必要で、一朝一夕では身につかない世界であることを痛感し、映画館をあとにしました。

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