にしきまつりコンサート

錦学習館で開催されました「にしきまつりコンサート」に出演させていただきました。今回で3回目の出演となります。今回はバスの小笠原美敬さんをゲストに、題して「バスってすばらしい!」~超低音の魅力~
お話は、礒山雅先生です。

「オペラ・オラトリオのバス」、「日本歌曲のバス」、「ドイツ・リートのバス」という三部構成。
1部は、モーツァルト「魔笛」のザラストロ、ハイドンの「天地創造」のラファエル、ヴェルディのフィリッポなど
バスのレパートリーを代表するアリアを3曲。
2部は、平城山、城ヶ島の雨などしっとりとした日本の情緒を渋いバスの歌声で。
トークコーナーでは、私のハチャケたトークとは対照的に、小笠原さんは、折り目正しく真面目で優しいお人柄が滲むようなお話でした。

3部のドイツ・リートは、学生時代からの私の好きな曲が続きました。
シューベルトの「セレナーデ」、シューマンの「献呈」、ブラームスの「便り」を弾きながら詩と音楽がいかに寄り添っているかをあらためて実感。

高校生のころ、初めてドイツ・リートの世界に触れ、涙した日のことを思い出しました。和声の変化により、心の襞に音色が染み込み、詩と音楽が一つになることでファンタジーが広がります。

ピアノ・ソロを、というご指示をいただき、歌にちなんだ曲を合間で弾かせていただきましたが、前半にK331のモーツァルトのソナタ、後半にシューベルトの「悲しみのワルツ」、「即興曲op.142-2」、「楽興の時 op.94-3」を選びました。

モーツァルトの「魔笛」のアリアに続いて演奏したイ長調のピアノ・ソナタは、次に続くハイドンの「天地創造」のアリアと結ぶ役目。「今や天は栄光に輝き」前のレチタティーボの中で、イ長調8分の6Andanteのおだやかで美しい部分があり、共通な世界を感じたからです。ハイドンのイ長調の旋律が歌われたとき、心にK331テーマの残像を重ね合わせたいと思いました。

後半は、最後の曲ヘ短調の「便り」に至る道筋として、平行長調の変イ長調で開始したかった、ということもあり、日本歌曲のもつ「悲しみ」とシューベルトの「悲しみ」のワルツを重ねたかったという選曲です。

若い頃、作曲の間宮芳生先生に師事していたとき、間宮先生にプログラミングの相談をさせていただいたことがあります。先生は、「プログラミングの際、曲の調は全く考えなくていい。調から自由に開放されたほうが選曲に幅がでる」というお考えでした。

それに対し、曲間の拍手は禁止!というほど全体の流れを調で構築し、最後の音が次の音につながる・・・というほど徹底的にこだわるピアニストもおられます。

どちらが正しい、という答えはないのかもしれませんが、最近、自分の中で全体の調のバランスや流れを重視する感覚が増してきているように思えます。現代曲を多く弾いていた時期には感じなかったある種の”調感覚”が、この10年ハーモニー(調和)を重視する古典を多く弾く中で、無意識のうちに養われていたのかもしれません。

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