モーツァルティアーデvol.1 ~シュタインとヴァルターの響き~

3月20日に使う2台のピアノフォルテ(シュタイン・モデル、ヴァルター・モデル)の調整に入っています。

ホールにも馴染み、楽器も落ち着いてきて、2台の違いを最近とみに感じるようになりました。モーツァルトが若い頃に絶賛したシュタイン、そしてウィーンに移り住んで購入し、晩年亡くなるまで愛用したヴァルター。
並べて演奏すると異なる個性が如実に現れます。

昨日、青春の輝きがあふれる初期の6曲のソナタをシュタインで弾いてみました。特にK284を弾くとエネルギーがパチパチとはじけ、少しやんちゃな感じの音色や鋭敏な反応が曲にピッタリとはまります。モーツァルトの手紙に「大きな効果をあげた」とあるのもうなずける感じです。20日のレクチャーでもこの曲を取り上げようと思っています。

それに対し、ヴァルターの方は、しっとりとしたなめらかな弾き心地で、シュタインに比べ、深みと柔らかさとバスの豊かさを感じます。晩年のロンドなどは、シュタインだとプツプツ切れてしまうのですが、レガートのパッサージュでも指になじんでくれるヴァルターでは、独特のカンタービレの効果を出してくれるのです。

モーツァルトが足ペダルをヴァルターの楽器の下にはめこんでバスを強化しながら20番のコンチェルトを演奏した記録が残っています。いったいどんな音になるのか、いつか、聴いてみたいものです。

今日は、この2台のピアノフォルテの音色をセレモアコンサートホール武蔵野で、お客様に至近距離で楽しんでいただきました。題して「モーツァルティアーデ」。シューベルティアーデにちなんでつけた私の”造語”ですが、記念すべき第1回としてこの2台を使いました。これからも大ホールでの演奏の合間に、ショパンやモーツァルトなどサロンで生まれた音楽は、サロンでも演奏し、息遣いを共有したサロンの空気と距離感を忘れないでいたいと思っています。

コメント