ヨハン・クラヴィーアにて

ウィーン カールス教会近くのピアノ工房、「ヨハン・クラヴィーア」にお伺いさせていただきました。工房を主宰され、ウィーンで数多くのピアノのメンテナンスをされておられる加藤嘉尚さんは、ピアノが最も個性的だった時代、20世紀初頭のピアノを特に高く評価され、「ピアノの黄金期」と呼び、コレクションされています。1912年製アリコート付きブリュットナーなど独特の音色の魅力を持った当時の楽器たちを弾かせてくださいました。
さらに古い19世紀初頭のベーゼンドルファーは、オーストリア政府から「文化遺産」に指定されているそうで、「国外持ち出し禁止!文化財保護のため、やたらと弾いてはいけない」とお告げがあったそうです。日本で日常的に弾いている私としてはギョッとした次第?!です。
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裏には、ブラームスが住んでいた家もあり、ウィーンの音楽家の息遣いがそのまま残っていました。
工事中なのが残念ですが、ブラームスのプレートが見えます。
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加藤さんのご自宅にもお邪魔させていただきました。ブラームスのパトロンの末裔など、元貴族が現在も住んでおられる建物は、扉も廊下も天井が高く、その昔、客人が馬車のまま入り、用事を済ませる間、馬を休ませておく馬屋の跡もありました。建物の風格は往時のまま。「エレベーターが使えなくて楽器を運ぶのに不便ではありませんか?」とお聞きすると「ウィーンのピアノ運送の人たちは、とてつもなく力持ちなので全く問題ない」そうです。
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現在ウィーンの上水道は、アルプスの湧き水が提供されているそうですが、Hoyos家は、源泉の土地を所有していた貴族だとか。その土地がウィーン市に寄贈されて現在に至るそうです。もともとの泉の持ち主であるにもかかわらず、ウィーン市にきちんと水道代を払っているとか。。。
ウィーンのお話をいろいろお聞きしたあと、カールスプラッツのスタジオへ。珍しいクラヴィオルガヌムという楽器でリハーサル中とのことで見学させていただきました。オルガニストのシュトルツ教授が弾いておられるこの楽器、2段鍵盤ですが、ヴァージナルとオルガンの2種類が一つの楽器に入っています。モンテヴェルディなどの時代、活躍していた楽器ですが、現在オリジナルは世界で5台しか残っていないそうです。
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練習のあと、重唱を歌っていた若いメンバー数人が楽器を分解し、片付けを始めました。ドイツへの演奏旅行にこれから皆で出かけるとか。楽器調整、分解、組み立て、運搬、演奏、、、全てを自分たちで行ってしまうウィーンの音楽家たちの逞しい姿に驚愕!しました。
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どく

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