装飾について

芸関連

藝術学関連学会連合 第12回公開シンポジウムが、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で開催され、
「東西の音楽にみる装飾」の発表の中で演奏を担当させていただきました。

藝術学関連学会連合は、15の学会からなり、毎年、東と西で交互にシンポジウムが行われてきたそうです。
今回、「装飾」というテーマでのシンポジウムに際し、デザイン都市神戸の歴史ある建物KIITOが選ばれたことは、嬉しいこと。KIITOには初めてお伺いさせていただきましたので、入り口前でまず記念撮影。

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藝術学関連学会連合会長、礒山雅先生のご挨拶に続き、3人の先生方の報告発表が行われました。意匠学会の川島洋一先生による「装飾と透明」、美学会の高安啓介先生による「無装飾から超装飾へ」、美術史学会の玉蟲敏子先生による「かざりと装飾~日本美術からのアプローチ」。

普段、「装飾」というものを定義づけして深く考えることもないまま、自然に装飾音を弾いてきた私ですが、あらためて「装飾」についていろいろと考える貴重な機会となりました。

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本体の欠点を隠す装飾、本体の美しさを引き立てる装飾、本体を生気づける装飾、そして単なる飾りにとどまらず表現の本質にかかわる装飾、さらには装飾が本体を乗っ取った状態とも言える「超装飾」の世界まで、建築、美術など様々な世界での「装飾」について、興味深いお話が続きました。

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東西の音楽にみる装飾のコーナーでは、まず西洋音楽から。

礒山雅先生が、記譜法の発達と装飾について、モンテヴェルディの≪オルフェオ≫を例にご説明されました。発表の後半に、私がバッハのゴールドベルク変奏曲の「アリア」を装飾無し、装飾付きの両方で演奏し、続いてモーツァルトの装飾語法の優れた例として「ロンド イ短調 KV511」を弾かせていただきました。

モーツァルトの音楽においては、小さな音符で書かれた装飾音だけでなく、旋律の中の「装飾的な」音も多くあります。それらは、音楽の本質にかかわる要素であり、単なる「飾り」ではなく、決して切り離すことができない旋律の一部であることもあらためて実感しました。
 
東洋の発表は、東洋音楽学会の小日向英俊先生によるシタール演奏。自由に感興の赴くまま、即興で装飾が奏されていく様を実演してくださいました。

午後1時に始まった「21世紀、いま新たに装飾について考える」シンポジウムが終わったのが5時。今回お手伝いに来られていた神戸大学大学院の美女学生さん3人と一緒にほっと一息。

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多様な装飾について思いを巡らせた4時間でした。

コメント

  1. yuko より:

    Kiri様
    いつもコメントありがとうございます。
    サンドイッチのパンのよう、とのお言葉、印象的です。
    神戸の美味しいベーカリーのパンのように、選び抜かれた材料と最高の技術で焼き上げたいですね。
    装飾を全て外した状態は、演歌で言うと小節線を無くした歌唱というよりも、コブシを一切回さない演歌という感じかと思います。
    無表情でつまらなくなります。
    ロンドKV511は、モーツァルト晩年の超名曲ではないでしょうか。
    あのロンド以上に哀しいロンドはみつかりません。

  2. Kiri より:

     お疲れさまでした。それにしても久元さまのご活躍ぶりは、その昔、漢文の授業で習った「孔席暖まらず墨突黔まず」という表現そのままですね。敬服いたしております。
     ゴールドベルク変奏曲の「アリア」は、サンドウィッチにたとえますと、上下(左右でもよろしいのですが)の「パン」の部分にあたる曲ですね。あれから装飾音を取り去ると、ちょうど小節なしで歌われた演歌を聴くような印象になるのでしょうか。想像もつきません。
     KV 511を早速聴き直します。いつも貴重なお話をありがとうございます。