ルドン

三菱一号館美術館の「ルドン~秘密の花園」展を鑑賞。

ボードレールの「悪の華」の挿絵などで知られるオディロン・ルドン(1840~1916)。幻想的な世界が描き出された絵の中に入り込むと、夢と現実の狭間にいるような感覚になりました。自分が蝶や得体の知れない生き物になって息をし、花の中に入り込むような・・・。

ピアニストの兄を持ち、ショーソン、ドビュッシー、ラヴェルら音楽家と交友を持ち、ヴァイオリンを自ら奏でるルドンの絵からは不思議な音が聴こえてくるようでした。

友である植物学者アルマン・クラヴォーの死に際し、その思い出を刻印した作品からは、限りない淋しさと追憶と喪失感が伝わります。

今回は、植物に焦点をあてたルドンの展覧会。数年前に見た同美術館の所蔵作品「グラン・ブーケ」に再会することができました。ドムシー男爵の依頼で製作されたダイニングを飾る壁画16点。圧倒的な美しさを誇る最大の「グラン・ブーケ」のほか、残り15点の壁画(オルセー美術館所蔵)も同時展示され、壁画の全貌が明らかになりました。

(グラン・ブーケの「写真OKコーナー」にて)
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ルドンの開花に繋がったロベール・ド・ドムシー男爵(1862~1946)との出会い。画業を支援し、それまでほとんど小品しか描いたことのなかったルドンに大作を依頼。その間、イタリアの旅に誘い巨匠の作品に接する機会を提供しています。

ドムシー男爵は、18歳で父を亡くし、ブルゴーニュにある広大な城を譲り受けました。30歳のとき、村長選に立候補。1892年5月8日の選挙結果表が展示されていました。「2位に大きく差をつけ、92票を獲得しトップ当選。」とあります。流麗なフランス語の文字と92という数字を見て、0をいくつつけるのだろう・・・と思ったのですが、0はつけず、そのまま「92票」とのこと。

このときのドムシー男爵の職業欄には、「年金(金利収入)生活者。独身」とあります。大地主さんで、働く必要はなかった”貴族””なのでしょう。当選の9日後に、これまた名家の貴族のお嬢さんジャンヌと結婚しています。

ドムシー男爵からルドンに宛てた手紙の中で「ダイニングは明るい暖色を主調とするべきで、青はそぐわないだろう。」という文言がありますが、「グラン・ブーケ」の実物には青い花瓶が描かれており、それが全体を引き締め、作品の成功につながっています。

注文をし、代価を支払うのに、自分の好みや趣味を押し付けるのではなく、ルドンを理解し、認め、
ルドンの才能を応援したドムシー男爵。芸術家とパトロネージュの理想の関係がそこには見て取れます。ヒナギク、樹木、人物、、、「食事シーンにはちょっとどうかしら?!」と凡人の私には思えてしまう絵もあるのですが、黄色を中心とした壁画が不思議なバランスで美しい空間を作り出していました。

ルドン~秘密の花園~展は、5月20日まで。この時期、三菱一号館美術館・中庭の新緑が綺麗です。

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