調律師とピアニストのコミュニケーション

PTNA音楽総合力UPワークショップ2018第8回の今日は、調律師の小宮山淳さんを講師にお迎えして、コンサート・チューナーとしての日々、ピアニストと調律師の関係などについて楽しいお話をお伺いしました。タイトルは「調律師とピアニストのコミュニケーション」。

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今日は、ファシリテーターを私が務めさせていただき、司会進行をお手伝い。先週まで極寒のロシアで調律をしておられた小宮山さん。日本に帰国したら温かすぎて、気温差はなんと30度。寒さには大丈夫だったのに、日本が温かすぎて喉をやられてしまった・・・とか。「講演は生まれて初めてのこと。緊張してます。。。」と咳をしながら始めた小宮山さんですが、楽しいお話が続き、会場は笑いの渦に。

ショパンコンクールでの話題やロシアのピアニスト、プレトニョフ氏との出会い、そしてコンサートツアーでの日々など、仰天の話題ばかり。

コンクールでの調律は、コンクールが行われていない夜中から翌日の早朝。ピアノを提供している各メーカーが、時間を配分し、作業が行われます。コンクール期間中、4時間以上続けての睡眠がとれたためしがない、という過酷な体力勝負の世界。昼夜を問わず元気でいなければできないし、家族にも会えないし、、、。

しかもメーカーの威信をかけてピアノをステージに乗せるまでにも、調律師としての高い技術のみならず、意地、情熱、語学力、音楽への深い理解、そして人間力が問われることがよくわかりました。

そしてピアニストによって音に対する趣味と要求と表現はまちまち。「冬の木漏れ日で白いレースのカーテンが揺れるような音を出してほしい、、、」というような表現をするピアニストもいるそうです。整音をしたピアノを弾いてもらいにんまりしてもらう瞬間、ほっとするとか。ペダル、タッチなど好みを知っている旧知のピアニストの場合は、リハーサルまでにそれに合わせて調整をしておけるけれど、初めてのピアニストのときには、それができません。リハーサル開始後、早いタイミングでのコミュニケーションがありがたい、とのことでした。

ところで、プレトニョフ氏はモスクワから400キロの都市でのツアーのために、自ら操縦する自家用ヘリコプターでモスクワまで迎えに来てくれたそうです。ところが小宮山さんは、大の高所恐怖症。手からも顔からも脂汗だったそうですが、操縦席から「大丈夫か」と聞かれ、「怖い」と言えず「は~い。元気!」と後ろの座席で答えたそうです。調律師さんってやっぱり大変!

ピアニストの希望に近づき、ピアノのコンディションをベストに持っていき、音楽にひたすら奉仕する職業。私達演奏家にとり、調律師さんは、共同作業の相棒であり、かけがえのない存在であることをあらためて感じました。

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