ヨハネ受難曲

演奏会などの中止、延期が続き、2020年の手帳は、✖や→の記号で埋まっています。
今日も、国立音楽大学進学ガイダンスで新潟に伺っているはずだった日。ちょうど今頃はドビュッシーの「月の光」を弾き、武田忠善学長先生の「狂詩曲」、澤畑恵美先生の「星の夜」の伴奏をしていたであろう時間帯。。。新潟の皆様、またの機会にぜひ聴いてください。

音楽という「非日常」の世界を表現してきた私たちにとり、平和な「日常」がいかに大切でかけがえのないものであったかをあらためて感じています。

密な空間で音世界を共有し、波動に共感し、いかに濃密な時間芸術を創り上げるかに情熱を傾ける演奏の世界。
見えないウィルスとの闘いの期間、三密を避け、ライブ活動を自粛し、皆で乗り切るしかありません。
そして、この闘いを終えた暁には、フェイスtoフェイスの有難さや生演奏の空間が、より輝いたものになると信じています。

人に会ってどこかに行く機会は無くなっていますが、SNSで、自宅にいながらにして、友人、知人と繋がることができる現代のツールがあるのは有難いことです。

昨日も、すざかバッハの会を主宰しておられた大峡さんが「信濃毎日新聞」の記事を送ってくださいました。
2018年2月22日に天国に旅立たれた礒山雅先生のご本の出版に関する記事です。

「ヨハネ受難曲」は、バッハの音楽が聴こえてくるような気品のある美しい装丁。先生の遺作です。
「マタイ受難曲」を出版されて以来、「ヨハネ受難曲」についてさらなる探求を進めておられた先生。胸ポケットにはいつもギリシア語の単語帳があり、キリスト教についてもご研究の幅を広げながら、バッハの意図に鋭く切り込み、独自の視点で展開し、金字塔を打ち立てられました。
以前、先生からいただいた「ヨハネ受難曲」の楽譜と照らし合わせながら、静かに読み進めたいと思います。

音楽の根源にある「救済」の力を緻密で凝縮された言葉で綴られた礒山先生。天国で、今私たちがおかれているこの状況をどのように見ておられることでしょう。

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