ベーゼンドルファー・コンサート@中野坂上

6月に入り、愛器ベーゼンドルファー(280VCピラミッド・マホガニー)の移動が続いています。神奈川アートホール→ 鎌倉芸術館→ ベーゼンドルファー・サロン。今日はベーゼンドルファー関係者の皆様の集いでコンサートをさせていただきました。

空間によって音響が変わりますが、名器が持つ表現の幅と美音への信頼は、場所が変わっても変わりません。ただ「ピアノの旅」で心配なのは梅雨どきの変わりやすいお天気です。湿気の影響を受けやすい「木の楽器」ゆえ。

今回、280VCとともに、使用した楽器は2台。ひとつは、1909年製。ウィーン国立歌劇場で歌手の方達によって使われていたピアノです。歌手に寄り添う楽器として柔らかく深い音を奏でてくれました。現代のピアノとは一味違う113歳の静かな味わい。280VCで弾かなかったシューベルトやブラームスを弾かせていただきました。

古き良き時代のピアノのあとは、技術の最先端ピアノ。私にとり初体験だったのが、Disklavier ENPRO。いわゆる「自動演奏付きピアノ」です。ホテルなどで人がいないのに鍵盤が動いているのを見て違和感を感じ、これまでほとんど触ったことがありませんでした。けれど今回デモンストレーションをしながら「食わず嫌い」克服の一日となりました。まずグリーク:アリエッタを弾き、自動再生。タッチ、デュナーミク、ペダリングまで再生され、自分がピアノから離れても、自分の分身が透明人間になって弾いているような不思議な感覚にとらわれました。

次は、エルガー:愛の挨拶(連弾バージョン)の下パートを弾き、録音。その再生音に自分が上パートを弾き「一人ぼっち版連弾」。
「え、そこでそんなふうにテンポを揺らしたかしら?」なんて自分にダメ出しをしたくなったりして・・・。

ピアノ・ロールからDisklavierへ。かつて一世を風靡した巨匠の演奏が目の前で再生可能。おまけに再生から録音までスマホで操作する手軽さ!
ウィーンで弾いたものが、瞬時に東京で聴けたり、同時に演奏できたり、コンピュータとの接続によってさまざまな可能性が開けます。

Disklavier でオンラインコンサートやオンラインレッスンを行った先生のお話は聞いたことがあったのですが、ベーゼンドルファーに搭載された実物に触れたのは、今日が最初。普段寡黙な技術者の方のプレゼンも興味深く、思わず聞き入ってしまいましたし、久しぶりにお会いする特約店の方のお話も懐かしくて身を乗り出してしまいました。

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