ウィーン・フィル来日

ウィーン・フィルハーモニーウィーク　イン　ジャパン２０２４＠サントリーホール
指揮はアンドリス・ネルソンス。
Ｂプロを鑑賞。
イェフィム・ブロンフマンをソリストに迎えたベートーヴェン：ピアノ協奏曲第３番　ハ短調　op.37
R.シュトラウス：交響詩『英雄の生涯』op.40

巨匠ブロンフマンは、録音でしか聞いたことが無く、生で聴いたのは今回が初めて。とにかく音の美しさと自然な息遣いと類まれなる集中力に脱帽。冒頭のハ短調のスケールから、最終楽章コーダまで、ベートーヴェンが語りかけてくるような演奏でした。特にPPが秀逸。アンコールで弾いたベートーヴェン第７番のソナタの第２楽章。ニ短調の嘆きの和音が始まるや、皺ぶきひとつない会場はピンと張り詰めた空間に。包み込むような柔らかな弱音は心の襞にすっと入ってきて、温かな情感に満たされました。生涯忘れない感動、奇跡の演奏に感謝。

後半の『英雄の生涯』は、６楽章の交響詩。たいてい途中で飽きてくることが多いのですが、今回は引き込まれっぱなし。大音量の爆発から最終章の安らぎの響きに向けての造形は見事でした。
若い頃聞いたウィーン・フィルの濡れたような輝きと陶器を思わせるようななめらかで透明な響きとは異なる、エネルギッシュな音質。時代の変化なのか、マエストロの個性なのか、聴いた席の違いなのか。ネルソンスのタクトはしなやかそのもので、時にタクトを左手に持ち替え右手で細やかな表情を見せたりしながら、弾き手、聴き手の心を揺さぶるマエストロ。ヴァイオリンからオーボエに移る箇所など鳥肌がたつ神業でした。
アンコールはヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ『人生を楽しめ』、ヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・シュネル『飛ぶように急いで』。会場は感動と興奮の坩堝と化しました。

ネルソンス氏は、ラトヴィアの首都リガのご出身。リガと神戸が姉妹都市ということでレセプションでは主人と共に、ズィルガルヴィス駐日大使に演奏会のお祝いを申し上げました。