キャンパスは美しい黄金色の季節。
12月1日には、講堂大ホールにて第142回定演が開催されました。指揮は高関健先生。
午後3時、ベートーヴェン《レオノーレ第3番》で堂々と始まった演奏会。
スコアからベートーヴェンの魂を読み込み、誠実に構築していかれる高関先生の大道を行くタクトに、学生達が心を一つにして付き従い、先生が学生一人一人の力を最大限引き出してくださっていることに感動。
トランペットの厳かな響きも心に残りました。
続くラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番。第2番に比べて演奏頻度は少ないけれど若きラフマニノフのロマンとエネルギーが溢れた作品です。ソリストに予定されていた及川浩治先生が体調不良のため、代わって清水和音氏を迎えての本番となりました。ソリスト交代を知らずに席に着いたお客様が清水さんの演奏を聞きながら及川先生のプロフィールを読んでいたり?!ということはありましたが、高関先生と清水和音さんの堅い信頼関係で、ソリスト交代を感じさせない確固たる演奏となりました。
清水さんの強靭なパワーとテクニックはラフマニノフの超絶技巧をもろともせず、轟音と炸裂音が鳴り渡りました。至近距離から重量をかける打鍵は、無駄な動きが一切無く、鍵底を打つ衝撃音までもが伝わってきます。しかも弦を打つハンマーはフェルトが巻かれているはずなのに、鋼鉄のハンマーで打っているのでは?と思う程の硬質な音。若者100人のエネルギーが押し寄せても全くびくともしないエンジン量に圧倒されました。最近流行りの草食系ビジュアルピアニストとは一線を画した音世界。前から4列目で聴いたせいか、スタインウェイから引き出される大音量の直撃のせいか、中耳がしばらくツーンと痛かったほどです。アンコールはショパン:英雄ポロネーズ。ナイーヴさや哀しみを排除したひたすら力強い英雄像が描かれました。いずれの曲も細部まで熟知した、清水さんの全く危なげない演奏でした。
「ラフマニノフ、難しくて大変なんです~」と2週間前に嘆いていたヴァイオリンの学生も、努力の甲斐あり、生き生きのびのび弾いていて、終演後目が合った瞬間ガッツポーズを送ったらにっこり。
この40年で「貴公子」から「重鎮」へと変貌された清水氏に、高関先生の「ブラボー!」の声が飛びました。
後半はレスピーギの交響詩《ローマの噴水》《ローマの松》。小鳥の声、水の音、鐘の音、樹々のざわめき、月光、夜明け、進軍ラッパ、、、、。
弦、管、打、パイプオルガン、ハープ、チェレスタなど様々な楽器の豊かな色彩によって、美しい絵画的な情景が広がりました。
大編成の学生オーケストラを纏め上げるマエストロの手腕に感謝。そして日常のオーケストラ・スタディの授業でご指導されておられる先生方の情熱と「アンサンブルのくにたち」の成功に心からの拍手を送り、会場を後にしました。
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